「ちゃかぽん」の恋人を主人公にした小説があります。
舟橋聖一著『花の生涯』
井伊直弼が「ちゃかぽん」だった頃、つまり「埋木舎」で暮らしていた頃に付き合っていた女性・村山たかを描いています。
村山たか
村山たか(別名・村山加寿江あるいは可寿江)は実在の人物です。
文化6あるいは7(1809あるいは1810)年に生まれ、明治9(1876)年に67歳で亡くなりました。
京都・金福寺
村山たかは亡くなった時、京都・金福寺の尼でした。
たかは金福寺に慶応3年弁天堂を建立しています。
金福寺には与謝蕪村の墓もあります。
蕪村ら一門は松尾芭蕉が滞在した金福寺に芭蕉庵を再興しました。
女スパイ?
村山たかは井伊直弼のために情報を集め、スパイのような役割を果していたとか。
京都で息子・多田帯刀とともに情報を集め、その情報をもとに安政の大獄が行われたという話もあります。
桜田門外の変のあと、村山たかは尊攘派に捕まり京都三条大橋の河原に三日間さらされたそうです。
ひとり息子・多田帯刀(たてわき)は天誅として首を切られます。
たかの生涯
たかの父は、近江多賀社尊勝院主。
母は同じく近江多賀社般若院住職の妹です。
同社の寺侍・村山氏の養女として育ちます。
美貌と才気の持ち主で、京都へ出て芸鼓になりました。
やがて金閣寺住職の隠し妻になり25歳で息子・帯刀(たてわき)を産みます。
その後、金閣寺の寺侍・多田一郎の妻になったのですが2年で離縁。
彦根に帰り部屋住み時代の井伊直弼の寵愛をうけます。
直弼の側近・長野主膳と親しくなり、共に直弼の政敵を探索します。
直弼の死後、文久2(1862)年、尊攘派により京都三条大橋に生き晒しになるが助けられ尼になりました。
朝日日本歴史人物事典:朝日出版社:1994
大河ドラマ
『花の生涯』はNHK大河ドラマの第1作になりました。
昭和37(1963)年に放送されています。
村山たかを演じたのは淡島千景さん。
井伊直弼は尾上松緑(二代目)さん。
井伊直弼の家臣となる国学者で村山たかに思いを寄せる長野主膳には佐田啓二(中井貴一さんの父上)さん。
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そして尊攘派に首をとられる村山たかの息子・多田帯刀(たてわき)には田村正和さん。
Wikipedia NHK大河ドラマの項よりお借りしました。
皆様、ステキ(*^^*)
「家」を背負わない女性
村山たかはシングルマザー。
彼女の生涯に起きたことが真実かどうかの確証はありません。
彼女の生涯は、生まれた「家」、嫁いだ「家」を背負っていないようにみえます。
小説『花の生涯』では、娼家で太夫に三味線を教えるお師匠さん・村山たか女として登場します。
自立して生きている強く、妖しい魅力的な女性です。
生きていく術だったのか、自由意志によるものだったのか当時の女性の生き方のひとつの形と見ると興味深い人物です。
諸田玲子著『奸婦にあらず』、櫻田啓著『祇園の女狐』の主人公になっています。